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LIVE REPORT DAY1
ap bank fes ’23 〜社会と暮らしと音楽と〜
ライブレポート:DAY1- 7/15(sat)

 ホームグラウンドであるつま恋で5年ぶりに開催した『ap bank fes ’23 〜社会と暮らしと音楽と〜』。3日間トータル約9万人のオーディエンスとともに作り上げたフェスの模様をレポートする。

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 ステージでのパフォーマンスがスタートする前に大型ビジョンに映し出されたのは、様々な著名人によるメッセージを伴った物語であり、言葉だった。普段私たちが感じる、こうであればいいな、という希望や、これじゃあマズいよな、という危機感、そういった感覚的には共通の認識としてみんなが持っているものを掬い取って、わかりやすい形で伝えてくれる。今回新たな試みとして取り入れられた「言葉のリレー」は、転換中も含めて、集まったオーディエンスを音楽とともにひとつにする役割を担った。  サブタイトルの「社会と暮らしと音楽と」という言葉も、まさにそうしたものとして、あらゆるもののリンクポイントになっていた。フェスは非日常空間だ、とよく言われる。たしかに、そういう側面もあるかもしれない。けれど、すべては繋がってそこにあるという考え方に基づけば、フェスも日常の営みのひとつであり、だからこそ素晴らしいのだ。

 Bank Bandによるオーガニックな音楽がそよ風のように会場を駆け巡る。オーディエンスから自然に沸き起こったクラップに後押しされるように櫻井和寿が登場すると、期待感に膨らんでいた空気が弾けるように歓声が上がった。オープニングを告げる1曲目はもちろんこの曲だ。「よく来たね」。歌詞の内容がそのまま会場に集まったみんなへの感謝の気持ちになっている。 「たくさんの楽しい思い出のあるつま恋。あの日の君に、そして今の君に、音楽が、想いが届くことを願って」という櫻井の言葉に続いて披露したのは「緑の街」。小田和正の名曲をBank Bandでカバーしたものだ。「奏逢〜Bank Bandのテーマ〜」、そして中島みゆきの「糸」を歌唱して櫻井はSalyuにバトンを渡した。

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M1. よく来たね M2. 緑の街 M3. 奏逢〜Bank Bandのテーマ〜 M4. 糸

 Salyuは「トビラ」「新しいYES」の2曲を披露した。自身の声を遠くへ放つように伸びやかなメロディを歌う彼女の姿が印象的だった。彼女をステージから送り出した後で小林武史がこう言った。「彼女が1曲目に選んだ『トビラ』は、これまで何度も出演してくれている中で実は初めてやる曲で。今回にふさわしいなってリハの時から思っていました。ゲストの中のトップバッターとしてすごくいい歌を歌ってくれました」。メッセージやメロディ、演奏といった単体ではなく、それらの総体として、つまりは音楽として心に響くSalyuのパフォーマンスだった。

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M1. トビラ M2. 新しいYES

 「人間はもう終わりだ!」で痛烈にして愛に満ちたメッセージを放ったのは真心ブラザーズ。Bank Bandと共に演奏した「サマーヌード」は軽やかさを増して響き、ラストの「素晴らしきこの世界」は逆に鋭く突き刺さった。ボブ・ディランのように、あるいは遠藤賢司のように、世界を見つめる彼らの眼差しはどこまでも優しく、そして怒っている。何をロックと言うかはさておき、この日この場で彼らのパフォーマンスに触れて感じることがあったなら、それはロックな体験だったのではないだろうか。

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M1. 人間はもう終わりだ! M2. サマーヌード M3. 素晴らしきこの世界

 今回初めて加わった[Individual Act]はアーティスト単体で常識に囚われないオンリーワンなパフォーマンスを展開する出演者がラインナップされる場として設けられた。1日目にはAnlyが登場。巨視的に世界を捉える歌詞が鮮烈な「Welcome to my island」などループマシンを駆使しながらエレアコ1本で重層的パフォーマンスを披露した。

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M1. エトランゼ M2. Welcome to my island M3. Venus

 「CROSS ROAD」から始まったMr.Childrenのライブは圧巻だった。小倉博和(Gt)や小林武史(Key)、沖 祥子(Violin)など、Bank Bandのメンバーも曲によって加わり、ボーダレスなパフォーマンスを見せた。語りかけるように歌われる独特のメロディラインから一気に疾走していく「横断歩道を渡る人たち」の詞世界と、今回のサブタイトル「社会と暮らしと音楽と」がリンクし、歌の世界に引き込まれていく。「HOWL」「口がすべって」に続いて披露したのは「祈り 〜涙の軌道」。熱気をそっと冷ますようにしっとりとしたメロディが会場を流れる。「幻聴」と「Your Song」は、特につま恋に集まったオーディエンスに感謝の気持ちを贈るという意味合いが強く込められた選曲ではなかったかと思う。〈でももう一度走り出す〉(「幻聴」)――コロナによるパンデミックの3年を挟んで、またつま恋で会えた喜びと、ここからまた新たな一歩を踏み出して行こうという決意が胸に響いた。全8曲、初日のMr.Childrenがステージを終えた。

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M1. CROSS ROAD M2. 雨のち晴れ M3. 横断歩道を渡る人たち M4. HOWL M5. 口がすべって M6. 祈り 〜涙の軌道 M7. 幻聴 M8. Your Song

「本当に今日でしかできない演奏を各アーティストと皆さんとで共に紡いでいっているなという気がしています。ありがとう」(小林)  再びBank Bandが登場し迎えるのは宮本浩次。「今宵の月のように」「悲しみの果て」とエレファントカシマシのヒット曲を立て続けに放って会場を盛り上げる。さらにソロ楽曲「冬の花」「ハレルヤ」などを身体の底から絞り出すように歌唱していく。ここで宮本が「会うたびに人をポジティブな心にさせてくれる本当に素敵な男です」と言って、櫻井を呼び込んだ。二人で披露したのは、「東京協奏曲」。小林武史が作詞作曲し、宮本と櫻井がボーカルを務め、Bank Bandが演奏を担当したコラボ楽曲だ。2人の本気の“歌い合い”に会場は幸せな空気に包まれた。

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M1. 今宵の月のように M2. 悲しみの果て M3. 冬の花 M4. P.S. I love you M5. ハレルヤ M6. 東京協奏曲

 宮本浩次を送り出した後に登場したのは――。 「この方とリハをするのも楽しくなっちゃいます。尊敬するアーティスト、小田和正さん!」(櫻井)  1曲目は「the flag」。混じり気のない透明な声がスッと遠くまで伸びていく。彼の声に触れて、本当に奇跡を体験したような驚きがまずあった。さらにコーラスの櫻井の声が重なり、シンプルに歌の力を感じられるパフォーマンスが繰り広げられていく。「ずっと前にこの曲を『ap bank fes』でやってくれるってことに決まっていたんですけど、台風で中止になったことがありました('07年)。その時にギターの小倉くんが夜、各部屋を回ってこの歌を歌ってくれたっていう話を聞いて、とっても感動しました」というエピソードの後に披露したのは「たしかなこと」。最後は、Bank Bandでカバーをしたこともあるオフコースの名曲「生まれ来る子供たちのために」で小田和正はステージを終えた。世代を超えて音楽が受け渡されていく様が見えたような気がした。

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M1. the flag M2. so far so good M3. たしかなこと M4. 生まれ来る子供たちのために

 この日のBank Band最後の曲は、Salyuも加わってパフォーマンスした「MESSAGE -メッセージ-」。前回つま恋で行われた『ap bank fes ’18』で初披露した楽曲だ。 「小田さんが歌ってくれた『so far so good』の歌詞にこういう一節があります。〈誰かを幸せにできるとしたら きっとそれがいちばん幸せなこと〉。今日、僕が一番響いた言葉です。こうやって見に来てくれた人みんなを幸せにできることが自分たちの幸せだと思っています。なので、本当に今日は幸せです」(櫻井)

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M1. 若者のすべて M2. MESSAGE -メッセージ-

ラストは、小林武史の鍵盤と櫻井の歌だけのシンプルな「HERO」、そしてSalyuの3人で『ap bank fes』のアンセム「to U」を丁寧に紡いで初日の全パフォーマンスを終えた。

M1. HERO M2. to U

TEXT:谷岡正浩 PHOTO:【ライブステージ】山川哲矢 / 藤井拓 / 後藤壮太郎 / 高田梓 、【会場内エリア】中野幸英